懲戒処分は刑事処分とやり方が似ているので、結構混合されることが多いのですが
刑事処分は人権を一部制限することができますが
懲戒処分はあくまで与えられた特権を一部の剥奪するというものであります
さて公務員が重大な問題を起こした場合、懲戒処分にならないと言うと
皆さんは不思議に思うでしょう。
実は公務員法(国家・地方その他もろもろ)には共通で「欠格条項」があります
これは公務員になるための条件でありますが
「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」とあり、その後に「前項に該当するに至つたときは、内閣府令で定める場合を除き、当然失職する」とあります。
禁固刑って政治犯が基本なので実は日本ではあまり見かけない刑罰です。なので禁固刑以上というと基本は懲役刑と思って問題ないです。つまり大事件を起こして懲役刑になると「当然、失職する」なのでその時点で公務員ではなくなります。懲戒処分は公務員にしか行えませんし、既に退職してる人物に免職処分を与えるというのも無意味だからです。
ちなみに「執行を受けることがなくなるまでの者」とは、これは執行猶予を意味しているため、執行猶予が付いたとしても同じです(ただし未成年は後述)
ここで疑問になるのはたちかぜイージス艦事件ですが、刑事罰は懲役2年4ヶ月、執行猶予4年。これは問答無用で失職要件を満たしていますが、海自についてはあえて懲戒免職処分を行っています。失職と懲戒免職は同じなので、わざわざ懲戒処分するだけ手間が増えるだけなのになぜしたか?
実は懲戒免職すると退職金が出ないというのが通例ですが、出すことも出来ます。
なので懲戒免職にしたのはこの退職金を出すためです。
おっと勘違いされないように、別に温情で退職金を出すわけではありません、被害者救済のための措置です。当然ですが犯人に慰謝料等のもろもろの損害賠償を払う能力はまずありません。単なる社会的制裁を与えてクビにしても被害者は救われませんからね。なのでいくばくかでもということで退職金を賠償金に充てることを目的としてそのような処置が認められています。
公務員の懲戒処分が軽すぎるのでは?と思う方もいますが上記のことを考えれば「処分を軽くすればするほど賠償金を支払える」構図になります。つまり懲戒処分がどのようなものであれ、その公務員は「退職金を全額払う上に、自主退職という名の強制退職させられる」ということなので実質懲戒免職と全く効果は同じなのです。
たまに刑事罰と懲戒処分量が釣り合ってないと思ったら、裏ではこういう調整をしているのではと思ってみると、あんがい納得できるものがあるかもしれません。
※未成年の執行猶予に関する特例
少年法第60条